講座(2) 葬儀式の内容 ⑤「お経の内容3」

仏の教え

 3、人の欲望に際限はありません。求めていたものが手に入ると、次のものが欲しくなります。限りない欲望は、さらに多くの利益を求めて、いつまでも満足することがありません。この道理をわきまえて、蜂が花の蜜のみを採取し、色や香りまで損なうことがないように、人も今必要なもの、量を知り戴いて、必要以上に求め過ぎないよう自己を再確認しながら生活しなければなりません。

 4、「時間とは弓から放たれた矢よりも速く過ぎ去っており、その中に存在している我々の命とは、草花に付く朝露がかろうじて落ちないでいる以上にもろく、儚(はかな)いものである。どのような方法を用いようとも、過ぎ去ってしまった1日を取り戻すことは出来ないのが道理である。」と、お経には説かれています。この世の確かに無常であるという道理を、心に深く刻み、一刻も早く智慧の眼の開眼に精進して、惰眠をを貪(むさぼ)り時間を無駄にするような生活は、慎まなければなりません。

 5、仏の教えでは人の迷いの中心には必ず三つの煩悩があるとして、これらを貪(とん)・瞋(じん)・痴(ち)の「三毒」(さんどく)と申しております。貪は貪(むさぼ)りの心であり、他に被害の及ぶような方法を用いてでも、自己の満足を得ようとする心です。瞋は瞋(いか)りの心であり、己が思い通りにならず、また不本意な場合、すぐに心を乱して恨み、ねたみ、悪口を重ねる心です。痴は愚痴(ぐち)の心であり、正しい道理や注意に耳をかさず、身勝手な理解にいつまでも執着する心です。
 「腹の立つことを忍ぶということは、苦しい修行を繰り返す以上に大切なことである。」と、お経に述べられているように、三毒の中でも瞋りの心を整えることは、非常に大切な修行といえましょう。
                
                
正安寺の堂宇。