講座(4)『修証義』の教え⑳

仏の教え

 第2章「懴悔滅罪」のつづき

 〇其大旨(そのだいし)は、願くは我設(たと)ひ過去の悪業多く重なりて障道の因縁ありとも、仏道に因(よ)りて得道せりし諸仏諸祖我を愍(あわれ)みて業累を解脱せしめ、学道障(さわ)り無からしめ、其功徳法門普(あまね)く無尽法界に充満弥綸(じゅうまんみりん)せらん、哀(あわれ)みを我に分布すべし、仏祖の往昔(おうしゃく)は吾等なり、吾等が当来は仏祖ならん。



【本文解説】
 さて、仏の御前にて懺悔し、自己を省みるときには、謹んで次のように念ずるのです。
 私がひとえに願うところは、もし仮に自身の気づかぬところで、過去に様々な過ちを重ね、それがために現在、仏の教えを理解し成就する妨げとなっているならば、実際に仏の教えに導かれ、自らも仏や祖師となられた方々よ、未だ仏の教えに出会いながら、理解も実践も出来ていない私をうれい、その妨げたる迷いや煩悩を吹き払って、元来この世界中に充ち満ちている仏の教えは一分でも、私に示し導いて下さい。
 多くの仏様や祖師方も、その前の仏の御前にて懺悔し、修行を重ねて導かれる以前は、私達と同じく迷い多き衆生であったと、お聞きします。
 であるならば、私達もまた仏前にて懺悔し、仏の教えに導かれながら修行を重ねるならば、必ずや仏道を成就できるものと確信するのです。
正安寺「瑞珖蔵」床間の掛け軸。中央は当山とも関係深く、親しく御親香された永平寺七十六世、秦 慧玉禅師(昭和60年、世寿90歿). ご真筆による「聴松」(ちょうしょう)、脇に掲げられた双幅の軸は、当山十六世大梅禅師の弟子の一人細井広沢(ほそいこうたく)の筆にて、当時の幕閣は将軍家側用人柳沢吉保の側近として、荻生徂徠とともに仕えていた。文字内容は極めて禅語的有名句であり「不立文字 教外別傳」「直指人心 見性成佛」と書されている。