講座(4)『修証義』の教え㉚

仏の教え

【本文解説】
 「三聚浄戒」(さんじゅじょうかい)とは、第一に「摂律儀戒」(しょうりつぎかい)、規則や戒めごとを正しく守り修めるべく勤めることを称します。摂は包摂、含め修めるの意。
 第二「摂善法戒」(しょうぜんぽうかい)、自らが納得出来る言動を修めるべく勤めることをいいます。
 第三「摂衆生戒」(しょうしゅじょうかい)、衆生とは現世の生きとし生ける全てのものをあらわし、自ら勤めると同時に、己以外の者達にも、生活の指針となるべき精神を、惜しむことなく伝えることをいいます。
 さらに進んでは、互いが仏に近づくべく励み勤めるべき、極めて重要な戒めが次の「十重禁戒」(じゅうじゅうきんかい)です。
 第一「不殺生戒」(ふせっしょうかい)、むやみ必要の無い殺生を避けるべく、行動することをいいます。
 第二「不偸盗戒」(ふちゅうとうかい)、むやみ他の物に執着心を起こし、盗み取るような行動をしない。
 第三「不邪淫戒」(ふじゃいんかい)、よこしまな欲望に無防備に身心を任せないことをいいます。
 第四「不妄語戒」(ふもうごかい)、うそ偽りを含む実なく他をおとしめるような、乱れた文言を避けることをいいます。妄語とは、他を乱しながら同時に己をも乱していく文言の連鎖の深意のことでもあります。
 第五「不酤酒戒」(ふこしゅかい)、あるいはお酒に逃げ、あるいはお酒に溺れ、他人に害を及ぼすような失態を避けることをいいます。
 第六「不説過戒」(ふせっかかい)、たとえ自らに理があろうとも、他の過ちを責め立てて、己の道理を誇り押しつける様なことは避けるべきと説きます。この戒めは実に具体的で、理智にも情にも長けた極めて仏教の根幹を彷彿とさせる教えでもあります。
 第七「不自讃毀他戒」(ふじさんきたかい)、自らを褒め称えて誇り、他をけなしおとしめるようなことをしない。
 第八「不慳法財戒」(ふけんほうざいかい)、己が学び蓄えた知識や財に執着し、出し惜しむことのないよう勤める。
 第九「不瞋恚戒」(ふしんにかい)、瞋恚とは怒り憎しむことを表しますが、厳密には瞋、己が理をないがしろにされ、あるいは無視されたときに起こる敵愾心と恚、他に心を開かず頑なになった憎しみとに分かれます。仏の教えでは、他の理を咎め責め立てることもいましめますが、たとえ自らの理が正しくも、理解されず、あるいは無視されるような結果になろうとも、頑なになって怒り憎しみを増大させぬよう説くのです。
 第十「不謗三宝戒」(ふぼうさんぼうかい)、仏教徒の根幹である仏・法・僧の三宝をむやみに疑い、そしり騒ぎたてることをいましめます。
 
          
           
先日三月二十日(金)、「御開山忌並檀越家春彼岸会先祖法要」の御斉席にて披露された正安寺什物中の三点。室町から江戸中期、近代に至るそれぞれの作品。