講座(4)『修証義』の教え㊳

仏の教え

 前号からのつづき
 【本文解説】
 「其の實に処して、其の華に居せず」なる言葉もあります。布施とは本来、己の物品に執着したり、貪らないことを意味しますが、他の物に対しても己が了見のみで論じたりせず、その物や行いの真意、行う人の真心の確かさ等を見極めようとするならば、あらゆるものが布施の行いとなるのです。
 財物に限らず、たとえわずかな己が知識や経験であっても、社会に還元し一助となりたいとの願いからであれば、それは立派な仏の教えの実践者として、必ず仏道を成就する手助けとなりましょう。
 ただし、その行いに返礼を求めたり、結果に対しての期待の心を増長させることなく、あくまで現在の自分自身が出来得る範囲で、その能力を分け与えることが大切なのです。
 故に己が心身が誠であるならば、決まった職種ではなく、あらゆる仕事や行いが布施という、仏の実践修行となるのです。このように仏の教えでは、我々信仰する者に対して特別な期待や、要求を課したりすることはありません。
 ただお互いの生活や仕事、習慣等日常の中で、しかも今出来得る範囲で助け、支え、力を分かち合うことの尊さと、勤めることの大切さ、厳(おごそ)かさを示しているのです。