講座(2) 葬儀式の内容「本葬儀①」

仏の教え

 御葬儀とは、今は亡き故人に仏様のお弟子様となっていただき、ご導師により心安らかな境涯へと導いていただく、すなわち「引導を渡す」(いんどうをわたす)、といわれる儀式のことです。
 紀元前五世紀頃、お釈迦様が各地を訪ねては教えを説かれるにしたがい、直接お弟子様になり、身近にて教えを見聞したいと願う方々が増えてまいりました。
 お釈迦様は、弟子となるに際して自ら守り勤めるべき規則を示されました。これを「戒律」(かいりつ)といいます。仏様のお弟子様として自覚を保ち、その規則を守り勤めることを誓願(せいがん)する儀式を「御授戒」(おじゅかい)といい、御受戒されたお弟子様方には、それぞれが目標等の教えになぞらえたお名前が授けられました。これが今日の「御戒名」(ごかいみょう)の元と思われます。
 受戒されたお弟子様方は、お釈迦様の身近にてその教えや所作を見聞し、日々の生活に励みつつ、徐々に仏弟子としての自覚に目覚められ、心安らかな境地を得られていったのです。
 ですから御戒名は元来、生前中に菩提寺の和尚様に、その意味や内容を含めてご指導いただき、受戒の儀式をお勤めされお名前を頂戴する、いわゆる「生前御戒名」(せいぜんごかいみょう)が本式なのですが、昨今の気忙しい世の中では、生前中においても、お寺様と親しくお付き合いいただくことがままならない、という方が増えているようです。
 そのような現代社会において、喪主をお勤めになられる方々が、亡くなられた後ではあるけれども、せめて仏様の正式なお弟子様として、心安らげる仏の世界に赴いてもらいたい、との深い思いから勤められる儀式が仏式の「本葬儀式」(ほんそうぎしき)なのです。
 ちなみに御導師様が故人に仏名(ぶつみょう)である御戒名を授けられることを「授戒」、故人が親しくその内容まで理解し誓願して受け取られることを「受戒」と、区別されて用いられる和尚様もおられます。 
                
                 
正安寺からの各種景色(庭園)