講座(3)『摩訶般若波羅密多心経』の教え⑬

仏の教え

〇能除一切苦。真実不虚。故説般若波羅蜜多呪。(よく一切の苦を除き、真実にして虚ならざるなり。故に般若波羅蜜多の呪を説かん。)

 【本文解説】
 そして、その般若波羅蜜多の働きは、我々衆生生きとし生けるもの達の身勝手な心の執着を基として湧き起こる、様々な迷いや苦しみを取り除き、この世の真実の有り様を示してくれるのである。
 であるからこそ、私たち仏道を志す者は進んで、「般若波羅蜜多」の呪、真言をお唱えし、また実践するのである。
 
 解釈としては、上記のようになります。仏の教えとは、思想でも哲学でもありません。真実を説くことが仏の教えであり、真実こそが仏の教えの全てでもあります。ですからここでも「真実不虚」と述べているのです。
 己の思慮を優先するあまり、正しき道理や自然界の法則に逆らうような生き方を続けていれば、自他ともに不都合が生じてくることは当然です。
 正しい道理を見極められる眼に目覚めて、それらに適った生活を自らが心がけ、他をして心がけるよう勧めるのが、仏の教えといえましょう。
 このように一見、当たり前のことを当たり前に説かれる教えが、真の仏の教えなのであり、霊的現象や超能力、病気の平癒に高額な対価の要求、教祖に何かしらが宿るなどの降臨を強調して説かれるような教えは、真の仏教ではありえないのです。
 人は正しきものを理解して、はじめて誤りを認識することができます。正しい教えに早く接し、誤りに迷信して他の多くを傷つけることがあってはなりません。
 ご先祖様を慕い、子孫にその心を伝えていくことを勧めるのも、人としての道理にかなっているからこそであり、己の不信仰を押しつけて、子孫がご先祖様を敬おうとする真摯な心まで奪うようなことがあってはなりません。
                 
            
昨年改修された開山堂、「海秀殿」(かいしゅうでん)。